妊娠
実母を中心に考えていくことについて
虐待に対して=(イコール)ですぐに母親のストレスが原因か、と言うのは「責任のすべてが母親にある」ことが大前提になっているため、短絡的で危険です。違和感を覚える人もいるでしょう。しかし虐待の基礎知識のデータでもわかる通り、主な虐待者の6割 を越えているのが実母という悲しい現実があります。実母以外のケースを考えると多岐にわたり過ぎて、子育てママにとっては焦点がぼやけてしまうかもしれないので、一番子どもに近い存在として(出産する当事者という意味で)実母を取りあげ、まずは実母中心のケースを考えていきたいと思います。(以後、母親=実母を指します。)
虐待を生み出すもの~その原因と考えられるのは?
母親がなぜ虐待にはしるのか?その答えは単純なものではなく、虐待者本人にとっても複雑な要因がからみあって、簡単には説明できないものと思われます。日常的に過度の虐待をゲーム感覚で繰り返し、子どもの命を奪う事件はあまりにも特殊で、別の分野での分析対象になるレアケースです。重要なのはこういったレアケースよりも、いわゆる普通の母親がその加害者になりうる危険性をはらんでいて、それをどう食い止めるか、ということです。
ここでは、アンケートをもとに、誰の心にも潜んでいる、幼児虐待につながる可能性のある感情のパターンをまとめてみました。幼児虐待の背景は身近なところにあります。なぜなら、ご協力いただいたほとんどのママたちが「誰にでも幼児虐待をおこす可能性がある」「虐待しそうになった」「虐待するのは特別な人じゃない」と、答えていらっしゃるからです。でも身近だからこそ、ちょっとした気づきや工夫、サポートでよい方向に向かうとも考えられます。
*(以下の感情を抱いている人が全員虐待者になると言うわけではありません。)
育児ストレス
●子育てがうまくいかない
マニュアルや情報にふりまわされてその通りにならない、うまくいかないとストレスを感じることも。自分は他のママに比べて育児下手だと思い込んでしまいます。
●とにかくイライラする
子どもが自分の言うことを聞かなくて、思い通りにならずにイライラしてしまいます。
●母親としての自覚不足
母親が精神的に未成熟なためいろいろな状況や気持ちをコントロールできず、そのストレスのはけ口が弱い子どもに向いてしまいます。
●母性愛神話の呪縛(子どもを愛せない自分を認められないストレス)
すべての母親が、産んだ瞬間からあふれんばかりの愛情で、身を犠牲にしても赤ちゃんをかわいがることが当然だという母性愛神話に苦しめられ、かわいいと思えないことで自分を責め、極度のストレスに陥ってしまいます。子どもを(赤ちゃんを)かわいいと思う時期は人それぞれであることを知り、愛せない自分を認めることが最初の一歩です。
母親としての重圧
●子どもは自分(母親)の成績表?
子どもの成長、病気、しつけ、成績等、何もかも母親の責任であるとのプレッシャーに苦しみます。周囲からかけられるプレッシャーと自分でかけてしまうプレッシャーがあり、自分と子どもを同一化しているとも言えます。
●三才児神話
三才までは母親の手で子どもを育てなければならないという、今では否定されている考え。この呪縛にかかると、専業ママは重責に苦しみ、ワーキングママは罪悪感で自分を責めてしまいます。
●アイデンティティの欠落
いわゆる自己実現できていないとアイデンティティが確立されないことに。そうなると唯一のアイデンティティである(と思っている)「母親」を失敗するわけにはいかないと、重責とプレッシャーで押しつぶされそうになってしまいます。
●理想の母親になれない葛藤
こうすべきだ、という理想論を押し付けられた場合に感じる重圧。世代間ギャップのある、夫の実家とうまくいっていない(嫁姑問題)場合にも見られます。少子化のため、少ない子ども(孫)にたくさんの目が集中し、子育てに関する過干渉で母親が苦しむことになってしまいます。母親の実家でも起こることです。
●子育てに非協力的な夫
性格、仕事、意識の低さ(父親としての自覚のなさ)など様々な理由で子育てへの協力を怠っている夫の存在に苦しめらることがあります。その結果、子育てに関するすべてを母親一人で抱え込むことになり、最大の理解者であるはずの子育てパートナーからも重圧を受けてしまいます。
母親としての重圧
●密室育児
気がついたら一日中子どもと家の中にいた、という閉塞な子育て環境。第三者がいないため、客観的な判断を誤りやすくなります。
●核家族化、地域との関係が希薄
実家や友達、知り合いが近くにいなくて、周囲の環境にもなじめない状況から起こります。(引っ越し先で陥ることも)人間関係がうまくいかずに孤独感を感じることもあり、理解者を求めています。
●社会からの孤立感
専業ママの場合、育児は24時間、それに家事があるため自分の時間があまり(人によっては全く)持てずに、社会に取り残された気分になります。孤独感以外に無気力感、先の見えない将来への不安感を味わう人もあり、こうなったのは子どものせい、子どもがいるから自由になれない、と責任が転嫁されることも。
●国や自治体の具体的な援助が乏しい
子育てサポートといっても自治体によって差があるので、保育所に入れなかったり、児童館が近くになかったり、まだまだ子育て環境は整っていないのが現状です。
虐待された者が自分の子に虐待をする?
親に虐待を受けていたので、自分も子どもを虐待してしまう(してしまうかも)。。。「身体的な虐待の連鎖」の考え方は、自分が虐待されていたから子どもを虐待してしまう、と断定する危険があり、またそう思い込むことによる自己暗示から、虐待に繋がるケースも考えられるため、虐待を促進してしまう可能性があります。(特に暴力の場合。)ただ、愛情の歪み、過干渉や母親の所有物のような扱いを受けて育った場合、それらを広い意味でのゆるやかな虐待と考えたなら、世代にわたって繰り返されることもあります。なぜなら、そういう愛され方しか経験がないから、愛し方がわからないということもありうるからです。通常、実際の経験がなくても見聞きしたり、親以外の人からの愛情を受けたことや他人との関わりによって習得されていくのですが、それがうまくいかなかった場合におこります。
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